【苦難の意義】
一般的に「苦難」は避けたいもの逃れたいものと思われています。多くの人にとって「苦難」は、不幸なことになっています。
しかし、シルバーバーチは”霊的視点”から「苦難は霊的成長を促してくれるありがたいもの」だから「苦しみを甘受」することが、正しい姿勢と説いています。
地上生活において生じる苦しみや困難は、考え方を変えることによって“ありがたいもの”になることを説き、地上世界にいながら“霊的視点”を持って苦難に立ち向かうように言っています。
◆苦難はカルマの清算(償い)◆
カルマとは摂理違反の結果です。因果律の法則の働きによって、原因(摂理違反)に対して自動的に結果(カルマ)が生まれます。
苦しみは摂理違反の結果なのです。
「蒔いた種の刈り取り」とはこのことです。
「いかなる大人物も自分の犯した過ちは自分で責任を取らねばなりません。各自が自分の人生への代価を自分で支払うのです。収支の勘定は永遠の時の流れの中で完全な衡平のもとに処理され、誰一人としてその法則から逃れることはできません」
『シルバーバーチの霊訓(5)』P.41/1~P.42/3
結果としてのカルマは、自動的に働きますがそれがいつどのような形であらわれるかはわかりません。この地上生活の間に刈り取りをするとは限らないのです。
しかし、必ずその時はきます。逃げおおせることはできません。
因果律の法則は機械的正確さで永遠の時間の中で働き、罪が見逃されることは決してありません。
「地上では必ずしも正義が勝つとはかぎりません。なぜなら因果律は必ずしも地上生活中に成就するとはかぎらないからです。ですが地上生活を超えた長い目でみれば、因果律は一分の狂いもなく働き、天秤は必ず平衡を取り戻します」
『シルバーバーチの霊訓(1)』P.58/6
◆苦難は霊的覚醒を促す◆
人間は窮地に陥ったり、問題解決の道が見つからなかったり、重い病気に罹ったり、全財産をなくしたりなど、苦しみのどん底に立たされると、無意識のうちに神仏に祈ることがあります。
今まで、信仰心も関心もなかった霊的世界に意識が向くようになるのです。
人生が順調で生活に満足している時には、自分の生き方を反省することもやり直したいと後悔することもありません。
魂が苦しみ自分を救ってくれるものはこの地上にはないと思うような体験が、人間の意識を「霊的世界」「霊中心の生き方」へ向かわせてくれるのです。
「魂はその琴線に触れる体験を経るまでは目覚めないものです。その体験の中にあっては、あたかもこの世から希望が消え失せ、光明も導きも無くなったかに思えるものです。絶望の淵にいる思いがします。どん底に突き落とされ、もはや這い上がる可能性がないかに思える恐怖を味わいます。そこに至ってはじめて魂が目を覚ますのです」
『シルバーバーチの霊訓(10)』P.23/L5~L8
「人間にとってその条件(真理を理解するため)とは辛苦であり、悲しみであり、苦痛であり、暗闇の体験です。鼻歌まじりののん気な暮らしの連続では、神性の開発は望むべくもありません。そこで神は苦労を、悲しみを、そして痛みを用意されるのです。そうしたものを体験して初めて霊的知識を理解する素地が出来上がります」
『シルバーバーチの霊訓(1)』 P.64/L2~L5
◆苦難は魂(心)を鍛える◆
苦しみや困難を乗り越える経験は、人間の魂(心)を鍛え強くします。
地上人生で強化された魂(心)は、霊界へ行ってからもそのまま維持されることになります。
人間が地上世界に誕生する目的の一つが「魂を強化する」ことです。
重い肉体を持ちながら物質的な環境の中で「霊中心」の生活を送るには自己コントロールの努力が不可欠です。物質である肉体の維持管理のためには、物質との適度な関わりが必要です。霊的なことと物質的なこととのバランスを取らなくてはいけません。それはこの物質世界では大きな困難を伴います。これが「霊主肉従の努力」です。
また、苦しみの体験を通して「霊的視野」が広がります。
苦難や困難の体験から気づきや教訓を得ることで、霊的視野が広がっていくのです。
「酷い(むごい)辛酸をなめ、試練に試練を重ねた暁にはそうした霊も目を醒まし、自我に目覚め、霊的真理を理解し、自己の霊性に目覚め、神を意識し、同胞と自然界との霊的つながりを知り、宇宙の大原理であるところの霊的一体性を悟ることができるようになります」 『シルバーバーチの霊訓(1)』P.99/LB3
「私たちは地上人生を、地上的視点ではなく霊的視点から眺めます。賢明な人間とは、すべての体験を魂の養分として摂取しようとする人のことです。辛いことや煩悩の誘惑に流されず、心の奥深くにある霊的な力を活用して困難に立ち向かおうとする人のことです。そうした精神で臨んでこそ、人間性が磨かれ強化されるのです」 『シルバーバーチの教え(上)』P.161/1
「困難にグチをこぼしてはいけません。困難こそ魂のこやしです。むろん困難の最中にある時はそれを有難いと思うわけにはいかないでしょう。辛いのですから。しかし、あとでその時を振り返った時、それがあなたの魂の目を開かせるこのうえない肥やしであったことを知って神に感謝するに相違ありません。すべてのこの世に生まれてくる霊魂がみな楽な暮らしを送っていては、そこに進歩も開発も個性も成就もありません。これは厳しい辛い教訓ではありますが、何事も価値あるものほど、その成就には困難がつきまとうのです。魂の懸賞はそうやすやすと手に入るものではありません」
『シルバーバーチの霊訓(1)』 P.57/7
◆苦難は愛の心を深くする◆
地上世界は「霊的成長レベル」の違う人間が集まる場所のため、人間関係のトラブルが発生します。
トラブルや衝突が起きた時、霊性の高い人間は忍耐力や寛容性を要求されます。
霊的に未熟な人間は、自分中心の言動をし自己主張をします。また周囲に対する気遣いや思いやりも少ししか持ち合わせていません。そのため、霊性の高い人間は、常に忍耐力と寛容性を要求されることになります。
しかし、こうした成長レベルの違う人間が集まる地上世界で利他愛を実践することで真実の愛が宿るようになります。霊性の高い人間が霊性の低い人間、自分より弱い人間に手を差しのべ助け合う行為の中で利他愛を育っていくのです。
「世の中には、ここに集える私たちに比べて精神的・霊的な豊かさに欠ける人がいます。そういう人々に愛の手を差しのべる仕事は、あなた方の霊性が向上するほど大きくなっていきます。絶望の淵に落ち込んだ人を励まし、病める人にはいかなる病にも必ず治す方法があることを教え、あるいは地上を美しく栄光ある世界にするために、霊力の流れを阻害している誤謬と迷信、腐敗した体制を打破していく、その基本的足場としての永遠の霊的真理を説くことが必要です」
『シルバーバーチの霊訓(1)』P.100/5~10
「私たちの説く福音は互助と協調と寛容と同情の精神です。お互いがお互いのために尽くし合う。持てる者が持たざる者、足らざる者に分け与える。真理を悟った者が暗闇にいる者を啓発するために真理という名の財産を譲る。そうあって欲しいのです。 地上にはその精神が欠けております。人間の一人一人が持ちつ持たれつの関係にあること、全ての人間に同じ神性が流れていること、故に神の目には全てが平等であること、霊的本性において完全に平等であるとの観念を広める必要があります。性格において、生長において、進化において、そして悟りにおいて、一歩先んじている者が後れている者に分け与えるという行為の中に偉大さがあるのです」
『シルバーバーチの霊訓(2)』P.24/6
◆苦難は霊界人との霊的絆を強くする◆
地上の私たち一人ひとりに守護霊がいます。
すべての人間に守護霊からの導きと援助があり、一人ぼっちで孤独な人はいないのです。
その守護霊には、私利私欲は一切なく、私たちの霊的成長を願って最大限の努力を続けています。
守護霊は自分が任された一人の人間のために働きかけてくれていますが、それとは別に人類全体への働きかけもあります。それが、スピリチュアリズムです。
スピリチュアリズムとは、霊界主導の「地球人類救済計画」です。
イエスを中心とする霊界の高級霊たちは、ひたすら地上の人間の救いを願う純粋な利他愛を実践しています。霊界の高級霊や守護霊の思いを理解することで絆が深められます。導きや援助を得られやすくなり霊的真理の理解も深まります。
霊界人との絆が強固になればなるほど、霊界の人々の影響力が増大するのです。
そして、霊界の人々と同じ思いに至れば、真の利他愛が実践できるようになります。
「 霊的真理は、これを日常生活に活用すれば不安や悩み、不和、憎しみ、病気、利己主義、うぬぼれ等々を追い払い、地上に本物の霊的同胞精神に基づく平和を確立することでしょう。霊的真理を一つでも多く理解していくことが、あなた方の魂と霊的身体を霊界からのエネルギーを受けやすい体質にしていきます。これは地上と霊界を結ぶ磁気的な絆なのです」 『シルバーバーチの霊訓(1)』P.97/LB4
「獲得した知識は着実に実生活に生かしていくように心がけましょう。その知識全体に行きわたる霊的理念に沿って生活を律していきましょう。…中略… そう努力することがまた、より大きな叡智、より大きな愛を受けるに相応しい資質を身につけることになり、また宇宙間の全生命の宿命を担いつつ一切を懐に包んでいるところの、その驚異的な霊力とのいっそう緊密なつながりを得ることになるのです」
『シルバーバーチの霊訓(10)』P.26/6
私たち人間にとって「苦難」とは、霊的成長を促してくれるありがたいものです。
霊的真理は、私たちの苦しみをなくしたり軽くするためのものではありません。
苦難の意義の理解と、苦しみを甘受と正しい対処の大切さを教えてくれるものです。
「この交霊会に出席される方々が、もし私の説く真理を聞くことによってラクな人生を送れるようになったとしたら、それは私が引き受けた使命に背いたことになります。私どもは人生の悩みや苦しみを避けて通る方法をお教えしているのではありません。それに敢然と立ち向かい、それを克服し、そして一層力強い人間となってくださることが私どもの真の目的なのです」 『古代霊は語る』 P.107/5
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